「うちの防犯カメラの映像って、どこに保存されているんだろう」

焼肉きんぐのアプリで約1,079万件、タイムズカーで約660万件。大規模な個人情報流出が続くなか、工場や店舗からこうした相談が増えています。監視カメラの映像も例外ではなく、2025年には国内の保育園や食品工場の映像約500件が海外サイトで誰でも見られる状態でした。

この記事では、実際の流出事件をもとにクラウド型カメラで映像が漏れる経路を整理し、映像を外に出さないエッジAIカメラで何が防げて何が残るかを解説します。

2026年、100万件超の個人情報流出がすでに10件

上場企業とその子会社による100万件以上の漏えいは、2026年10月5日時点で10件。2025年通年の6件をすでに超えています(東京商工リサーチ調べ)。

TABLE 01 — 2026年に公表された主な大規模流出
公表時期 企業・サービス 件数 主な原因
2026年 KDDI(ISP向けメールシステム) 1,223万1,954件 不正アクセス
2026年10月5日 物語コーポレーション(焼肉きんぐ公式アプリ) 1,078万8,963件 不正アクセス
2026年9月28日 タイムズモビリティ(タイムズカー) 約660万件(アカウント数) Webシステムへの不正アクセス。運転免許証画像も対象
2026年4月・8月 イエローハット 317万9,454件/最大180万1,499件 不正アクセス(8月は予約システム)

1,000万件以上の事故も3件起きており、2025年までの集計期間全体の件数にすでに並びました。件数は各社の公表値で、「流出のおそれ」を含みます。

出典:東京商工リサーチ「上場企業『個人情報漏えい』、過去最悪ペース」(2026年10月7日)

10月に入ってからも、大和証券の委託先、ローソン、JR東日本とビューカードなどの公表が続き、政府は関係省庁による対策会議を開くと報じられています。ニュース映像で流れを確認しておくと、状況がつかみやすいはずです。

焼肉きんぐ、タイムズカーなど情報漏えいが相次ぐ背景に生成AIか(2026年10月6日)
不正アクセス 政府まもなく対策会議 大量の情報漏えい相次ぐ(2026年10月8日)

監視カメラの映像も、実際に流出している

顧客データだけでなく、監視カメラの映像そのものが外部に見られていた事件も国内外で起きています。原因の種類が違う4件を挙げます。

国内:保育園や食品工場の映像約500件が海外サイトに(2025年11月)

読売新聞とトレンドマイクロの共同調査で、国内のネットワークカメラのライブ映像約500件が海外サイトで公開されていたことが分かりました。保育園の園児の顔がはっきり映る映像や、食品工場の内部の映像も含まれていました。海外の7サイトで見つかった約2万7,000件のうち、日本に関連するものは約1,300件とされています。

原因として挙げられたのは、公開範囲の設定ミス、IDとパスワードが初期設定のまま、古いカメラでセキュリティ更新が止まっている、の3つです。高度なハッキングではなく、設定の不備で丸見えになっていました。

保育園や工場の防犯カメラ映像、500件が海外サイト流出…設定に不備「犯罪に悪用される恐れも」

参考:森井昌克「防犯カメラが“覗かれる日常”に」(Yahoo!ニュース エキスパート、2025年11月10日)/めざましmedia「防犯カメラ映像約1300件が海外に流出?」(2025年11月5日)

米Verkada:クラウド事業者が侵入され15万台超のカメラにアクセス(2021年3月)

クラウド型の業務用カメラを提供するVerkadaでは、攻撃者が管理者権限を得て、顧客の15万台を超えるライブカメラにアクセスしました。米連邦取引委員会(FTC)は、精神科病院や女性向けクリニックの映像も見られていたと指摘しています。利用者側の設定がどれだけ正しくても、預け先のクラウドが破られれば映像は見られてしまう、という例です。

出典:FTC プレスリリース(2024年8月30日・英語)

米Ring:事業者の従業員が利用者の映像を閲覧(2023年5月に和解)

Amazon傘下のRingについて、FTCは従業員や委託先が利用者の映像を自由に閲覧・ダウンロードできる状態だったと認定しました。1人の従業員が女性利用者の寝室や浴室を映した映像を数千本見ていたとされ、Ringは580万ドルを支払うことで和解しています(Ringは違法性を否定)。外部からの攻撃ではなく、預け先の内部の人間が見ていたケースです。

出典:FTC プレスリリース(2023年5月31日・英語)

米Wyze:システム障害で他人の映像が約1万3,000人に表示(2024年2月)

家庭用カメラのWyzeでは、クラウド側の障害から復旧する際にデバイスとユーザーの紐付けが崩れ、約1万3,000人のアプリに他人のカメラのサムネイルが表示されました。実際にタップして見た人は1,504人です。攻撃も不正もなく、クラウドの不具合だけで映像が他人に渡りました。

出典:GIGAZINE(2024年2月20日)

クラウド型カメラで映像が漏れる4つの経路

前章の事件を経路ごとに分けると、クラウド型カメラの弱点がどこにあるかが見えてきます。

TABLE 02 — 映像が漏れる経路と、利用者側で防げるか
経路 実例 利用者側で防げるか
カメラ・録画機の設定不備 国内の保育園・工場映像(2025年) 防げる(初期パスワード変更、公開設定の確認、更新)
クラウド事業者への侵入 Verkada(2021年) 防げない
事業者内部の不正閲覧 Ring(2023年和解) 防げない
クラウド側の不具合 Wyze(2024年) 防げない

下の3つに共通するのは、映像が自社の外にあることです。クラウド事業者がどれだけ対策をしていても、映像を預けている限り、相手のセキュリティ水準と社員のモラルに自社の映像の安全を委ねることになります。

工場の場合、映るのは従業員の顔だけではありません。製造ラインのレイアウト、設備の型番、作業手順、取引先から預かった製品まで映り込みます。個人情報の問題であると同時に、技術情報の流出でもあります。

エッジ処理のローカルAIカメラなら、映像は工場の外に出ない

エッジAIは、カメラやその横に置いた小型コンピューター(エッジ端末)の上でAIの処理を行う方式です。転倒の検知や立入禁止エリアへの侵入判定を現場の機器だけで完結させるので、映像をクラウドに送る必要がありません。

外に出すとしても「何時何分にエリアAで転倒を検知」といった判定結果だけにできます。映像そのものは構内の機器に残り、インターネットの向こうには置かれません。前章の表でいえば、クラウド事業者への侵入・内部の不正閲覧・クラウドの不具合という3つの経路が、構成上なくなります。

TABLE 03 — クラウド型カメラとエッジAIカメラの比較
観点 クラウド型カメラ エッジAIカメラ(ローカル処理)
映像の保存場所 事業者のクラウド 構内のエッジ端末・録画機
AI処理の場所 クラウド上のサーバー カメラまたはエッジ端末
外部に出るデータ 映像そのもの なし、または判定結果のみ
ネット回線が止まったとき 録画・検知が止まることがある 現場で検知・記録を続けられる
月々の通信量・クラウド保存料 台数と保存期間に比例して増える 映像を送らないぶん小さい
遠隔からの閲覧 得意 VPNなど別の仕組みが必要

遅延が小さいことも利点です。映像をクラウドに送って結果を待つ往復がないため、転倒検知のように数秒の差が意味を持つ用途では、現場で判定したほうがアラームが早く鳴ります。

エッジ型でも設定の不備には注意する

映像が外に出ないとはいえ、エッジ型カメラにも守るべき点は残ります。国内の500件流出は、クラウドではなくネットに直接つながったカメラの設定不備が原因でした。ローカル運用でも、同じミスをすれば同じことが起きます。

エッジ型で残るリスクは、主に次の4つです。

  • 録画機やエッジ端末の管理画面を、ポート開放でインターネットに公開してしまう
  • 初期パスワードのまま運用する
  • 保守用のリモート接続が、常時つながりっぱなしになっている
  • 端末やストレージそのものの盗難・持ち出し

どれも「外から入れる口を作らない」「機器を物理的に管理する」で対処できます。クラウド型の3経路のように、利用者の手が届かない場所で起きるリスクではない点が大きな違いです。

導入前にベンダーへ確認する5項目

クラウド型かエッジ型かを問わず、監視カメラを選ぶときは次の5点を見積もりの段階で質問しておくと、後から「映像が外に出ていた」と気づく事態を避けられます。

TABLE 04 — ベンダーへの確認項目
確認項目 聞き方の例 望ましい回答
映像の保存場所 録画データは物理的にどこにありますか 構内の機器のみ
外部への送信内容 インターネットに送られるデータを全部挙げてください なし、または判定結果・死活監視のみ
AI処理の場所 検知のAIはどの機器で動いていますか カメラまたは構内のエッジ端末
管理画面の公開範囲 管理画面は社外から開けますか 構内LANからのみ
保守時の接続方法 リモート保守はどうつなぎますか 必要なときだけ接続し、終わったら切る

費用は台数・検知したい内容・既存カメラを流用できるかで大きく変わります。エッジ型はクラウドの月額保存料がかからない代わりに、端末の初期費用が乗る構成が一般的です。正式な金額は、現場の条件を伺ったうえで個別にお見積りします。

よくある質問

Q. いま使っているクラウドカメラは、すぐ外したほうがいいですか?

すぐ外す必要はありません。まず、何を映しているカメラかを棚卸ししてください。駐車場や外周など映っても困らない場所はクラウド型のままにして、製造ライン・事務所・更衣室付近など社外に出したくない映像を撮っているものから、エッジ型への置き換えを検討するのが現実的です。

Q. エッジ型だとスマホから映像を見られなくなりますか?

映像をクラウドに置かないため、そのままでは社外から見られません。社外から見る必要がある場合は、VPNで構内LANに入って閲覧する構成にします。異常の通知だけなら、映像を含まない判定結果をスマホに送る形にすれば外に映像を出さずに済みます。

Q. 既存の防犯カメラにAIを後付けできますか?

RTSPなどの標準的な方式で映像を取り出せるネットワークカメラであれば、エッジ端末を追加してAI処理を載せられる場合が多いです。カメラの型番と設置状況によって可否が変わるので、型番が分かれば事前に確認できます。

まとめ

この記事では、2026年に相次いでいる個人情報流出の状況と、国内外の監視カメラ映像の流出事件4件をもとに、クラウド型カメラで映像が漏れる経路と、エッジ処理のローカルAIカメラで防げる範囲・残るリスクを解説しました。クラウド事業者への侵入、内部の不正閲覧、クラウドの不具合の3経路は、映像を外に出さないエッジ構成にすることでなくせます。一方で、初期パスワードや管理画面の公開といった設定の不備は、エッジ型でも利用者自身が塞ぐ必要があります。

まずは社内のカメラを一覧にして、それぞれの映像がどこに保存されているかを確かめるところから始めてみてください。

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